EC関連企業の財務をゆるっと分析してみた【楽天・シュッピン・いつも・ベースフード】

乗組員的EC探査録

はじめに

2024年が早くも6月を過ぎ、もう7月も半ば。今年も残すところ半年足らずとなりました。
さてみなさんは6月はなにに思いを馳せていましたか?そうですね、株主総会ですね。

ということで今回は、EC(Eコマース)関連の企業を独自に財務分析してみたいと思います。ECに関連する上場企業4社を選び、公開されている財務諸表からいくつかの指標をもとに分析します。

ちなみに本稿は投資情報を発信する目的ではありませんし、私自身も財務のスペシャリストではありません。あくまで「独自に、ゆるっと財務分析してみた」がコンセプトですので、分析自体は初歩的な内容にとどまるものです。何かのご参考程度にご覧いただければ幸いです。

財務分析とは

財務分析とは、企業の決算書などの情報からその状況や課題を把握する技法です。企業の「収益性」「効率性」「安全性」といった観点から指標を計算し、問題点を抽出して改善につなげることを目的とします。

財務分析は、主に決算書を基に行います。特に「貸借対照表(B/S)」「損益計算書(P/L)」「キャッシュフロー計算書(CF)」の三つの決算書、通称「財務三表」を重視します。財務に詳しくない方でも、ビジネス書などでこれらの名前は耳にしたことがあるかもしれません。
これらの数字を基に分析を行うことで、企業の実態が見えてきます。普段、テレビCMや商品、サービスから得ているイメージとは異なる企業の「素顔」を知ることができる・・・かもしれません。

財務分析に使用する3つの指標(分析のまえに)

今回、財務分析にあたって取り上げる指標は以下の3つです。

・流動比率
・営業利益率
・キャッシュフロー(営業CF/投資CF/財務CF/フリーCF)

以下、それぞれ簡単に説明します。

流動比率

流動比率とは、企業の短期的な支払い能力を示す指標で、安全性を測ります。計算式は「流動比率 = (流動資産 / 流動負債)× 100」です。流動資産とは「1年以内に現金化できる資産」、流動負債とは「1年以内に支払い義務のある負債」を指します。つまり、流動比率は1年以内に支払わなければならない負債に対して、どれだけ現金化できる資産があるかを示します。理想の流動比率は200%以上とされていますが、少なくとも100%以上は必要です。100%を下回ると、1年以内に資金がショートするリスクがあるからです。

営業利益率

営業利益率(売上高営業利益率)は、企業の本業による収益性を表す指標です。計算式は「営業利益率 = (営業利益 / 売上高)× 100」です。営業利益は損益計算書(P/L)の項目で、「売上高」から「売上原価」と「販売費および一般管理費」を控除した額です。ちなみに営業利益から「営業外収益」と「営業外費用」を加減したものが「経常利益」です。したがって営業利益は本業から得た利益を示します。

キャッシュフロー

キャッシュフロー(キャッシュフロー計算書/CF)は、貸借対照表と損益計算書の各値を加減して算出したもので、企業に流入・流出したキャッシュの変化を把握するものです。キャッシュフローは以下の3つの項目に区分されます。

営業CF:本業から得たキャッシュフロー。営業活動力や債権回収力を示します。本業で利益があればプラスになります。

投資CF:設備投資などに使われるキャッシュフロー。積極的な設備投資を行うとマイナスになりますが、資産の売却などはプラス要因となります。

財務CF:資金の借り入れや返済、社債・株式発行により増減するキャッシュフロー。資金調達が返済を上回るとプラスになります。

これらのうち「営業CF」と「投資CF」の合計額を「フリーキャッシュフロー(フリーCF)」と呼びます。フリーCFは企業が自由に使える資金を意味し、プラスであることが望ましいです。これがマイナスの場合、財務CF(借入など)で補う必要があります。

なぜこの3つの指標なのか?

本稿では次に挙げる3つの指標(流動比率・営業利益率・キャッシュフロー計算書)を用いて分析を行います。実務では他にも多くの財務分析指標があるのですが、あくまで本稿では簡易的な分析とします。流動比率では貸借対照表(資産)から企業の安全性を、営業利益率では損益計算書(利益)から企業の収益性を、キャッシュフロー計算書からは実際のキャッシュの流れを把握します。これらによってなるべく多角的な視点での分析を試みます。

なお分析にあたっては各社の有価証券報告書や財務分析ウェブサイト「ザイマニ」を参照しています。「ザイマニ」のデータは現時点において2024年3月までに提出された有価証券報告書を基にしているため最新のデータとは限りませんが、直近2〜3年間での動向を知ることで各企業の実態をより把握できるものとなっている(はず)です。

ザイマニ:https://zaimani.com/

さっそくEC関連の企業を財務分析してみよう

楽天グループ|4755

[単位は百万円]
・売上高:2,071,315
・流動資産:11,312,788
・流動負債:10,768,927
・流動比率:105.1%
・営業利益率:-7.9%(前年-16.9%)
・営業CF:724,192 / 投資CF:-597,416 / 財務CF:291,956 / フリーCF:126,776

まず、トップバッターは誰もが知る楽天グループです。同社の売上高は2兆円を超え、名実ともに大企業といえる規模です。しかし、流動比率は105.1%と僅かに100%を超えているだけで、短期的な支払い能力は確保されていますが、余裕があるとはとても言えません。

営業利益率は-7.9%で、前年の-16.9%からは改善しましたが、依然としてマイナスです。この原因としては、楽天モバイルへの先行投資による負債が大きく影響しているといえます。またキャッシュフローの観点から見ても、投資キャッシュフローがマイナスである一方、財務キャッシュフローがプラスであることからも、先行投資の影響が伺えます。しかし、営業キャッシュフローがプラスであることは、楽天の基本的な収益力の強さを示しており好材料と言えるでしょう。

今後の課題として、楽天グループは営業利益率のマイナスをどのように改善するかが重要です。個人的には楽天市場のヘビーユーザーとして、楽天ポイントプログラム(SPU)のさらなる改悪が行われるのかどうか気になるところです・・。

シュッピン|3179

[単位は百万円]
・売上高:45,618
・流動資産:13,203
・流動負債:5,640
・流動比率:234.1%
・営業利益率:5.4%(前年7.2%)
・営業CF:1,244 / 投資CF:-445 / 財務CF:-549 / フリーCF:799

シュッピン株式会社は、中古ブランド時計や中古カメラを取り扱う企業です。特に、同社が運営する「マップカメラ」は中古カメラ市場で有名であり、国内だけでなくeBayを活用して海外にも展開しています。また中古筆記具専門店としても知られ、特に万年筆の品揃えが豊富です。新宿に店舗を構えており、私も何度か利用したことがあります。
参考:万年筆入門!

シュッピン株式会社は高い流動比率(234.1%)を維持しており、短期的な安全性が高いといえます。営業利益率は5.4%と堅調ですが、前年の7.2%からは若干低下しています。IR情報によると、今後はECをさらに強化し、売上高販管費率を抑えることで収益性を高める計画です(目標は売上高計上利益率8%)。

キャッシュフローの面でも営業キャッシュフローとフリーキャッシュフローが共にプラスであり、健全な資金繰りが保たれています。ただし投資キャッシュフローのマイナスは主に在庫取得のためとのことで、経営が負債に依存しているとも考えられます。

いつも|7694

[単位は百万円]
・売上高:12,310
・流動資産:5,556
・流動負債:2,829
・流動比率:196.4%
・営業利益率:2.6%(前年5.2%)
・営業CF:-344 / 投資CF:-650 / 財務CF:-429 / フリーCF:-995

われわれECコンサル業界で「いつもを知らない人はモグリだ」と言われるほど(?)有名な企業です。売上高は約123億円で、ECコンサル市場での大きな存在感を示しています。流動比率も196.4%と高く、短期的な安全性には問題ありません。

しかし営業利益率は2.6%とプラスではあるものの、前年の5.2%から大幅に落ち込んでいます。また、キャッシュフローはすべての指標でマイナスとなっており、特に営業キャッシュフローのマイナスは本業での収益力が乏しいことを示しています。フリーキャッシュフローもマイナスであるため、資金繰りに課題があることが明らかです。

ちなみに、これらのデータは2023年3月(前々期末)のものなのですが「連結キャッシュ・フロー計算書」の欄における「棚卸資産の増減額」が約8億5千万円となっており、営業キャッシュフローのマイナス要因の大部分を占めていることがわかりました(棚卸資産とは、噛み砕いて言うと「売れ残った在庫=不良在庫」のことです)。さらに詳細をみると同社は2022年に連結子会社のM&Aに伴い”のれん”に対して2億2500万円の特別損失を計上しており、どうやらこのタイミングで多くの不良在庫を抱えてしまったのではないかと推察できます。なお流動資産には棚卸資産が含まれますので、同社の流動比率の高さの理由も、その構成をみれば不良在庫によるものといえるでしょう。有価証券報告書を参照しますと、棚卸在庫や仕掛品などを控除した当座資産は約3,641(百万円)であり、当座比率は128.7%となります。デッドラインの100%は超えているためやはり短期的な安全性には当面問題ないといえますが、他方で流動資産に含まれる在庫のウェイトを示す結果だといえます。

補足すると、最新の2024年3月(前期末)のデータでは、営業キャッシュフローはさらに悪化し、-609百万円となっています。このマイナスの要因は主に「売上債権(売掛金)」と「前払費用」の増加によるものでした。直近でも同社の資金繰りのリスク管理がより重要な課題となっていることがわかります。

いつもさんは弊社のド競合でもありますので、僭越ながら今後もその動向には注目していきたいと思います。

ベースフード|2936

[単位は百万円]
・売上高:9,857
・流動資産:3,293
・流動負債:1,947
・流動比率:169.1%
・営業利益率:-9.9%(前年 – )
・営業CF:-733 / 投資CF:-265 / 財務CF:2,458 / フリーCF:-998

ベースフード株式会社は、完全栄養食「BASE FOOD®」を展開する企業で、2022年に東京証券取引所グロース市場へ上場したベンチャー企業です。個人的には「健康的なパン(ベースブレッド)を発明した会社」という印象を持っていますが、実際にはパンだけでなく、パスタ、クッキー、焼きそばなども取り扱っているとのことです(意外にも、パスタの方がパンよりも先に発売されていたようです)。同社の製品は未来的かつおしゃれなパッケージが特徴で、スーパーやコンビニなどで見かけたことがある方も多いのではないでしょうか。ECでは自社サイトのほか、Amazon、楽天、Yahoo!などでも販売しており、積極的な海外展開も行っています。

さて同社は、流動比率が169.1%と高く、短期的な支払い能力には余裕があるといえます。しかし、営業利益率が-9.9%で営業キャッシュフローがマイナスである点が気になります。ただし、ベンチャー企業としては、このような赤字は珍しいことではありません。財務キャッシュフローが2,458百万円であることから、同社が積極的に資金を調達して運転資金を確保していることがわかります。今後の課題は、収益性の改善とキャッシュフローの健全化だといえるでしょう。

さらに、最近では「完全栄養食」というジャンル自体に競合が増えているため、自社製品の差別化や顧客へのさらなる浸透が急務です。

さいごに

いかがだったでしょうか。
財務分析をつうじることで、EC業界について一歩でも理解が深まるきっかけになれば幸いです。

さいごに念押しですが、本稿は2024年7現在でわかる情報をもとに構成しています。なにも投資を斡旋するものではありませんし、仮に投資をするにせよ必ずリスクが伴いますのでご自身の判断で行なってくださいね。

それを抜きにしても財務分析は面白いものですので、ぜひECに限らずIR情報等から気になる企業の中身をのぞいてみると新しい発見があるかもしれませんよ。

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