「消費税ゼロ」は本当におトク?ECの視点で考えてみた

3号機です。衆院選が終わりましたね。今回は突然の解散だったために事前のニュースでは北陸や東北などの「雪国の選挙事情」が取り上げられていて私なんかは「豪雪地帯は大変そうだね〜」なんて呑気に構えていたのですが、投票日当日、なんと私の住む東京都でも最大5cm程度の積雪を観測。ちょうど開催中の冬季オリンピック中継で観るイタリア、コルティナの雪景色に妻と「いつか二人で行きたいね」なんて話していたのですが、選挙期日の朝、投票券を握り締めて寒景色へと身を投じた我が夫婦、早くもその寒さに慄き、外に出たことを後悔。降り積もった雪に転んでしまわぬよう、すでに感覚の鈍った足先を恐る恐る前へと差し出しながら、口元にあてがった手の平からこぼれる吐息も、やがて鈍く煌めいては消えて。これもひとえに清き一票、そう、この清き一票のために!と、ここは東京。あい変わらずワケの解らない事言ってます。

さて、そんなこんなで投開票を終え、ふたを開ければ高市首相が率いる自民党が単独で316議席を獲得するという大きな結果となりました。そして今後注目すべきは、選挙戦の中で注目を集めた争点のひとつ「消費税の減税」です。自民党からは「飲食料品に限って2年間、消費税をゼロにする(という検討を加速する)」という方針が示されています。

消費税減税は、数ある政策の中でも非常に分かりやすいものです。毎日の買い物に直結し「安くなったぞ!」という実感を持ちやすいからです。一方で、その分かりやすさの裏側で、実際に経済や産業にどのような影響が出るのかについては、あまり語られていないようにも感じますし、特にEC(ネット通販)という視点で見ると、いくつか注意すべき点があります。以下はあくまで私個人の感想ですが、みなさんそれぞれの視点で考えてみるキッカケになれば幸甚です。

ECにおける消費税減税の影響

実質的な値下げ競争が始まる可能性

仮に飲食料品が消費税ゼロになった場合、まずECで起こる短期的な変化のひとつとして、単純に税込価格がそのまま下がることの分かりやすい「お得感」と食品ECの需要増でしょう。米やレトルト食品、冷凍食品など保存がきく商品では「どうせならまとめて買っておこう」という動きも出てくるはずです。

ただし、ECならではの問題も同時に起こります。ECでは価格の比較が簡単にできるため、消費税がゼロになった分が店舗側の利益として残りにくくなります。ようは消費税がゼロになることで消費者側で「じゃあ安くなるよね」という空気が一気に広がり、気づけば値下げ競争が始まってしまう、というわけです。さらに、価格をこれ以上下げられなくなると、今度は送料無料やポイント還元、クーポンといった形で競争が激しくなることも考えられます。一見すると消費者にとっては嬉しい話ですが、食品ECはもともと利益率が低い傾向にあり、送料や梱包、冷蔵・冷凍配送などのコストも重いため、こうした競争は店舗側の体力を削ることになります。特に中小のECや、産地直送、オーガニックなどのこだわりの食品を扱う事業者にとっては大きな負担になることが予想できます。

税率変更に伴うシステム対応

また、税率変更に伴うシステム対応も無視できません。過去にも2014年、そして2019年の消費税率の変更に伴い多くの店舗がその対応に追われた経緯があります。商品価格の表示切り替えや会計処理、請求や返品対応など、ECサイト側には一定の改修作業が発生します。大手企業であれば対応できても、小規模な事業者にとっては場合によっては店長さんひとりで対応しなければならず、時間もコストもかかる大変な作業です。もちろん消費税率の変更作業などは頻繁に行うものではありませんので、その都度マニュアルやアナウンスを逐一チェックしながら行わねばならず、万が一ミスが生じてしまったとき、最悪モールからのペナルティを受ける可能性も考えられるため、通常業務にプラスしてこうした慎重な作業を要するのは店舗側にとっては大きな負担となってしまいます。

そもそも消費税減税ってなぜそこまで議論になっているの

消費税減税のメリット面とは

いろいろ課題はありますが、一方で、飲食料品の消費税ゼロにはメリットがあるのも事実です。
生活必需品の価格が直接下がるため、食費の負担が重い世帯ほど「助かった!」と感じやすい政策です。特に低所得層では、家計に占める食費の割合(=エンゲル係数)が高いため、負担軽減を実感しやすいという点で、分かりやすい逆進性(=所得が低い人ほど所得に対する税や社会保険料の負担率が高くなる性質のこと)への対策だと言えます。

消費税減税のデメリットはけっこうシビア

ただし、この逆進性の観点には注意も必要です。割合で見ると低所得層ほど効果が大きい一方で、金額ベースで見ると、実は高所得層のほうが多くの恩恵を受けるのです。つまり高所得層は食費の総額が大きく、また高付加価値食品を購入する機会も多いため、消費税がゼロになることでお得になる金額自体も大きくなるというわけです。この傾向はECとの関係でよりはっきりとし、たとえばオーガニック食品や産地にこだわった商品、ブランド米や加工品など、ECでよく売られている比較的高価格な商品ほど、消費税ゼロによる減税額自体も大きくなります。その結果として政府として本来支援すべき層よりも、支援の必要性が低い層に多くの金額が配分される形になりやすく、再分配政策としては効率が良いとは言い難い政策であるともいえます。

さらに財源の問題もあります。日本経済新聞によれば、食料品の消費税率をゼロにすることについて「日本経済にマイナス面が大きい」と考える人は88%に上っています。消費税は安定した税収源であり、たとえ時限的であっても、その減収は将来の増税や給付削減への不安につながります。また、生活必需品である食料品はもともと価格が多少下がっても消費量が大きく増えにくい(=需要の価格弾力性が低い)分野です。そのため、経済全体を押し上げる効果は限定的と言わざるを得ず、長期的な成長や生産性の向上にはつながりにくいという側面もあります。

参考:食品消費税ゼロ「経済にマイナス」88% 学者調査、財政悪化を懸念 – 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD265RF0W6A120C2000000/

消費税ゼロが「終わるとき」にも注意が必要

消費税ゼロの議論では「始まったとき」の分かりやすい効果に目が向きがちですが、実はより注意すべきなのは「終わるとき」です。
今回の案は、あくまで「2年間限定」とされています。つまり、あらかじめ「元に戻る」ことが前提の政策です。ECや実店舗問わず、この「元に戻る」という変化が、想像以上に大きな影響を持つと予想できます。

ひとつは、消費税ゼロの期間中に、消費者の頭の中には「税抜きが当たり前の価格」が新しい基準(=内的参照価格)として定着すること。とくに食品は購入頻度が高いため、その価格感覚が繰り返し刷り込まれていきます。その状態で消費税が復活したとき、実際には「元の価格に戻った」だけなのに多くの人にとっては「値上げされた」という感覚になってしまいます。このとき起こりやすいのが、買い控えです。
店頭はもちろん、ECでは特に価格の変化がすぐに可視化されるため「ちょっと高くなったな」と感じた瞬間に、購入を見送る行動が起きやすくなります。とくに定期購入やリピート商品では、解約や購入頻度の低下として表れやすいところです。

また、店舗側にとっても消費税が復活したからといって、その分をそのまま価格に転嫁できるとは限りません。税ゼロ期間中に激化した価格競争や送料無料、ポイント還元などの条件を急に元に戻すことはおそらく難しく、結果として「売上は戻らないのにコストだけが戻る(増える)」という状態に陥ってしまう可能性すらあります。

つまり、消費税ゼロは「始めるとき」よりも「終わらせるとき」のほうが難しい政策だと言えます。短期的な安心感と引き換えに、将来の調整コストを先送りしてしまうリスクがあることは、あらかじめ意識しておく必要があるでしょう。

さいごに〜「分かりやすさ」の裏側に〜

消費税減税は非常に分かりやすい政策であり、その「分かりやすさ」によって短期的な安心感や効果は期待できるかもしれません。しかしECを含む産業への影響や金額ベースでの再分配の歪み、そして中長期的な経済への効果を考えると、本当に消費税減税が有効な政策なのかは慎重に考える必要があるでしょう。
今後どう政権が判断するか実際まだ不透明ではありますが、あらゆる政策は「分かりやすさ」だけで判断するのではなく、その裏側にある影響にも目を向けていきたいところですね。

ところで雪が降ると、どうしても私のようなアラフォー世代としてはGLAYのPVを真似てTERUよろしく雪景色の中、全力で「逢いたいからあ〜!」とやりたい衝動に駆られるのですが、両腕を広げようとした刹那、全てを察した妻に全力で止められました。

GLAY / Winter, again
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