3号機です。わが家は、ヒガシマルのうどんスープを欠かさない。いうまでもなく、うどんが好きなのである。朝昼晩の別なく、うどんは私の小腹を満たしてくれる。ちょっと体調がすぐれない時も、冷蔵庫にうどんがあればどんな高熱も乗り越えられる気がする。どん兵衛や赤いきつねといったインスタントを好まないわけではないが、私にとっての「うどん」は、いつも”袋麺とスープ単体”のコンビでありたい。なぜならインスタントとは異なり、袋麺からつくるうどんは私たちに「ちょっとだけ料理している感」を与えてくれるのである。単にチンやお湯を注げば良いわけではなく、私たちはそれを「茹で」ねばならない。この「茹で」という工程において、私を含め、世のズボラさんたちの心は救済されている。グツグツ煮えるうどんを箸でほぐしながら「ちゃんとお鍋、使ってるよ」と。「ほらお母さん、私ちゃんと料理しているよ」と私は今日も独りごちながら、椀に溶かした黄金色のヒガシマルスープに、茹で上げたうどんを浸からせて、仕上げにネギを散らす。そうだ、天かすが好きなら入れたっていい。うどんだけじゃあ足りねえってんなら助六と合わせたっていいよ!うどんはいつだって私たちの腹と、自尊心とを満たしてくれる。あったかいね、うどん。ありがとう。
そうして出来上がったうどんをズビズビ啜りながら、この「ちょっとだけ料理している感」にさせてくれる感覚、なにやら覚えがあるぞと。そうだ、バイブコーディングだ!バイブコーディングに似ている!
ということで、今日は「バイブコーディング」についてのお話です。
バイブコーディングは「こういう感じのものが欲しい」を叶えてくれる
最近あちこちで「バイブコーディング(Vibe Coding)」という言葉を見かけるようになりました。
GitHub CopilotやOpenAI CodexといったAIツールに「こんな感じの仕組みが作りたいんだけど」という要件や雰囲気(vibe)を投げて、細かい実装を考え込む前に、とにかく動くコードを出してしまう。そんな開発スタイルを指す言葉です。「いやいや雑すぎるのでは?」「品質は大丈夫?」と感じる人もいれば、私なんかは正直「めっちゃ便利!」と感じていたりして、まだまだ出たての概念なのでいろんな見方をする人がいるでしょう。業務システムの現場にいる方だと、この両方の感想が同時に浮かぶ、という人も多いのではないでしょうか。
ちなみにこのバイブコーディングという言葉は、エンジニア界隈だけでなく、思わぬところでも話題になりました。2025年、将棋界のトップランナー藤井聡太さんが、最近関心を持っているものの一つとして「バイブコーディング」を挙げていたという話が広まり「え、バイブコーディングってなんなん?」と、一気に世間の知名度も高まったように思います。
従来だとシステム等の開発では「設計を固めて、仕様を詰めて、レビューを通してから実装」といった流れが基本でした。たとえばECでいえば決済や在庫、会計といった領域があり「あとから直せばいい」では済まない場面も多くあります。一方で現場レベルでは、ちょっとしたデータ確認や一時的な管理ツール、仮説検証のための画面など「完璧でなくていいけど、今すぐ欲しいもの(ツール)」も大量に存在します。ここにバイブコーディングは強烈に刺さるのです。どういうことか?
つまり、頭の中で仕様を整理しきれなくても「こういう感じのものが欲しい」と伝えるだけで、それっぽく動くものが出てくるのです。触ってみることで「あ、ここは違うな」「これは使えそうだ」と考えられる。この「まず触れる状態を作れる」というお手軽さは、これまでの開発(プロセス)ではなかなか得がたいものでした。
バイブコーディングのデメリットについて
ただし、メリットもあればデメリットもあります。バイブコーディングで出てきたコードは、往々にして構造がいびつです。なぜそう書かれているのか分かりにくく、少し手を入れようとすると、思わぬところが壊れます。私も実際、バイブコーディングでHTMLやCSS、JSを生成してみたのですが「そこまでやらなくてもいいんじゃない?」という細かな点まで言及したようなコードが生成されたり、その影響で後から一部だけ修正しようとおもっても、気付かぬうちに他の箇所とも関連づけられた設計になっていたことで、想定以上の工数を費やしてしまいました(プロンプトを極めればそういった点も調整できるのかもしれませんが)。特にECはもちろんシステムの基幹部分でこれをやると、誰も全体を把握できない、修正のたびに不安が増える、責任の所在が曖昧になるといった問題が一気に噴き出すでしょう。「まあ動いているからOKじゃん」という判断は、長く運用するシステムではかなり危険です。
バイブコーディングとXP(エクストリームプログラミング)
ここで少しだけ、エクストリームプログラミング(XP)の話に触れておきます。XPとは「最初から完璧を目指さない」「小さく作って、頻繁にフィードバックを得る」という思想を持った開発アプローチのことですが、バイブコーディングもまた、このXP的な考え方とよく似ています。正しさを机上で決めるよりも、まず動かして確かめてみるという考え方。ただし、XPにはテストやリファクタリング、コードの共有といった「荒れすぎないための歯止め(ルール)」がありました。その点バイブコーディングは、その歯止めを意識しないまま使ってしまいかねないので、ただの「後始末の大変なコード生成」になってしまうこともあり、注意しなければなりません。つまり、バイブコーディングは万能な開発手法というものではなく、あくまで一時的なツールや周辺業務の効率化、アイデアを形にする初速として向いているといえます。反対に、長期間運用する基幹処理、金銭や在庫が絡む重要な部分、複数人で保守し続けるコードにはかなり向いていません。この線引きを意識できるかどうかで、バイブコーディングは「強力な武器」にも「後で首を絞める原因」にもなってしまいます。
とはいえバイブコーディングコードの書き方を大きく変えました。「頭の中のイメージを、一度、形にしてみる」という作業が、一部のエンジニアだけの独占ではなくなったのですから。担当者や企画側が、完成度は低くても「こういうものが欲しい」と具体物を提示できるようになった、この意味はとても大きいでしょう。
さいごに
さいごにバイブコーディングは、システムやソースコードを雑に作るための免罪符では決してありません。ましてや「考えなくていい開発」でもありません。「考える前に、触れる状態を作る」ための道具です。ECや業務の現場では、その”軽さ”を使う場所を選ぶこと、そして本番に持ち込む前に、ちゃんと作り直す勇気を持つこと。それさえ意識できれば、バイブコーディングはかなり使い勝手のいいツールになるはずです。
ヒガシマルのうどんスープも、うどんだけじゃなくて、おでん出汁や茶碗蒸し、炊き込みご飯に使っても美味しいんです。使い勝手、最高!最近、関東エリアでも取り扱いスーパーが増えてきたので元関西民の私にとって水を得た魚。出汁を得たうどん!yeah!

